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M&Aで失敗する社長は素人投資家と同じ思考回路

 昨日は日本郵政の経営者に毒を吐きましたが、まだ吐き足りないのでもう少し書かせてください(嫌な性格ですね。すみません)。

 

 日本の大企業が行う大規模なM&Aや投資の多くが見事なまでに失敗してしまいますが、中には成功している会社もあります。M&A巧者として一番有名な会社は日本電産でしょう。すでに国内外で50社以上のM&Aを手掛けていますが減損は一度もありません。また、日本たばこも大成功していると会社の一つです。10年ほど前から立て続けに海外の同業を傘下に入れ、今や売上・利益とも国内を上回る規模まで育て上げました。

 また、ブリヂストンも巧者といえるでしょう。1998年に米国で苦境に陥っていたファイアストンを買収、見事建て直し、米国での製造販売拠点を手に入れました。一方、昨年には米国内の販路拡大を目的に、米自動車用品小売りのペップボーイズ社の買収に乗り出しましたが、競合が買収価格を釣り上げたため断念した。購入先の価値を冷静に見極め、高値掴みしないという判断のもと、あえて断念したわけです。攻める時は攻め、諦める時は諦めるという姿勢は評価に値すると思います。

 

 これらの会社と昨日酷評した日本郵政東芝キリンホールディングスなどを比較すると、減損組のお粗末さはいっそう際立ってしまいます。日本郵政は上場にあたり成長戦略を求められ、ダボハゼ的に食いつき失敗したようですし、東芝の場合も日立製作所選択と集中戦略の成功をまねて、高いリスクと法外な買収価格を度外視して買収に突き進んだ挙句、会社が存亡の危機に瀕してしまいました。

 また、キリンの場合も投資銀行かどこかから持ち込まれた案件を、早く決断しないとアサヒビールハイネケンが買ってしまうと急かされて、デューデリもろくにせずに買ってしまい、高い授業料を払うことになりました。

 

 経済雑誌レベルの情報なのでどこまで正しいのかわかりませんが、失敗組は「投資家から成長を求められている」とか「他社が成功しているから」とか「早くしないと他人に買われてしまうから」という理由で、割高な価格であることを無視して買収してしまったと書かれています。会社側からは、なぜ、この時期に、この会社(事業)を、割高な価格で買収する必要があるのかについて経営的な観点から詳しく説明されることはありませんでした。

 結局、「周囲が投資で儲けているから勧められるがままに株を買った」とか「今日決断しないと売れてしまうと不動産会社にそそのかされ、深く考えずに言い値で住宅を購入した」という素人と同じような発想しか持ち合わせない経営者だと言わざるを得ません。

 

 経営能力がないのにトップに立ってしまい、忠告をしてくれる側近もいなかった彼らもかわいそう人ではありますが、高い報酬と地位と(一瞬の)名声を手に入れたのですから、過ちを反省しきちんと説明責任を果たしたうえで、自ら身の処し方を考えていただきたいものです。

 

 素人が急に大金を手にすると舞い上がって、女や酒、ギャンブルにうつつを抜かすのと同じで、レベルの低い経営者に多額の金を持たせるとろくなことはありません。今、多くの大企業では、余剰なまでの手元資金と低金利、それに株主からの圧力により、M&Aを行っています。過去の失敗が繰り返されないことを願うばかりです。(でも数年後にまた減損のニュースで紙面が溢れかえっていることでしょう)