「配当性向30%」病の会社に投資してはいけない

 上場企業が開示しているIR資料や投資家向け説明会資料の中に必ず「株主還元」という項目が記載されています。

 そこにはたいてい配当性向(当期純利益に占める配当金の割合)か総還元率(当期純利益に占める配当金と自社株買いの合計額の割合)が記載されています。最近は総還元率の記載も増えてきましたが、まだまだ配当性向を記載する会社の方が圧倒的に多いように思います。

 会社の資本は株主から預かったものですから、利益が出たらむやみに内部留保を厚くし現預金を積み上げるよりも、不要不急な現預金を株主に還元する方が望ましいことは明らかです。ですので、会社として株主還元の方針を掲げることはとても理にかなっているといえます。

 

 ただ、上場企業の多くが配当性向30%病を患っていることには投資家として注意が必要です。この病を患っている会社の多くは、経営者の資質に問題があると思われます。こんな会社にばかり投資していては、株式投資を成功させることは難しいでしょう。

(ところで「配当性向30%病」って聞きなれない言葉ですよね。私が勝手に名づけました。すみません)

 

 配当性向を公表している会社の半分以上が配当性向を30%前後としています。でもその理由を具体的に記載したり、説明している会社をほとんど見かけません。そんな会社の多くは「配当性向30%」病に罹っている可能性があります。

 見分け方は簡単です。根拠を具体的に説明してほしいと質問すればよいのです。「総合的に勘案して」みたいなあいまいな説明しかしない会社は残念ながら病気にかかっているかもしれません。

 実は「配当性向30%」は全上場会社の平均値です。根拠なく30%を掲げている場合、他社並みであれば叱られないはしないだろうというホンネが潜んでいるとしか思えません。そんな株主軽視、横並び事なかれ志向の経営者が率いる会社に投資しても報われることはないでしょう。

 

 本来、配当性向をどの水準にすべきかは、業界や事業内容の特性、会社の成長のステージ、中期計画の資金計画、経営者のポリシーなどを勘案して決定すべきです。無配か30%還元かが問題はありません。そして、経営者が自らの口で投資家が納得できるような説明をすることこそが大事なのです。

 私の質問に「製造拠点が国内に集中しており、地震をはじめとする自然災害リスクへの対応が最重要課題である。BCPプランを実行するためには、最悪1年間事業が停止しても会社が存続できる現預金が必要なので、現預金が●億円になるまで配当性向は●%に抑え内部留保を優先させていただく」と社長自ら答えてくれたことがありました。

 また別の会社からは「当社は人材が競争力の源泉であり、人件費が高いために利益率が低くなっている。一方、システム以外に設備投資は必要ないため、税引き後利益の50%以上を株主還元する」という説明を聞いたこともあります。

 

 これこそが本当の株主重視の姿勢だと思うのですが、そこまでできている経営者は10人に何人いらっしゃるでしょう?残念ながら1人か2人でしょうね。こんな経営者が半分近くになれば、世の中も株式市場ももっと明るくなると思うのですが、いかがでしょうか。