長生きのリスクをトンチン保険で回避することはできない!

 商魂たくましい生命保険業界が、長生きするリスクに対応する保険を発売したということで一部で話題になっています。トンチン保険と呼ばれるタイプのもので「グランエイジ」「ながいき物語」などの名前で発売されています。

 トンチン保険という言葉を初めて聞く方もいらっしゃると思います。こちらに詳しく解説されていますので、まずはこちらをお読みください。

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 このタイプの保険では保険金の受取方法を選べるようですが、長生きのリスクを回避するための保険という売り文句を信じるのであれば、5年保証(または10年保証)+終身年金で受け取らないと意味がありませんね。

 とすると、終身年金で受け取った場合に、何年で払い込んだ保険料を上回る年金をもらえるかが気になります。紹介したブログによると50歳の男性が20年間払込み70歳から年金を受け取ると仮定して試算しています。驚くことに89~90歳にならないと受取額の方が支払った保険料を上回らないということです。N社の商品でもD社の保険でもほぼ同じ結果になっています。

 

 ものすごくざっくり言えば「20年間保険料を支払ってモトをとるのに20年もかかる。しかもモトを取る前に死んでしまったら支払った保険料よりも少ない金額しか受け取れない」という驚くべき結果が出てきました。もちろん、90歳以上生きればモトが取れるわけですが、50歳の男性が90歳まで生きる確率は約25%です。モトを取るという視点から考えれば4人に3人は損をする商品です。

 

 「確率は低いかもしれないが、100歳まで生きれば1.5倍受け取れるんだから意味がある。確率が低くても大きなリスクに対してこそ保険の意味がある」と強弁する人がいるかもしれませんので、もっと夢を打ち砕く話を書きたいと思います。

 さきほど書いた元が取れる年齢(損益分岐点)というのはあくまで、名目上の話です。つまり50歳から90歳までの間インフレがまったく起きないという前提の試算です。

 世界中の先進国(日本を含む)はインフレ率を2%前後にすることを目標にしていますから50歳から90歳までのインフレ率をゼロと考えることは現実的とは言えません。

 もし、年平均2%で計算するとモトが取れる年齢は何と104歳になってしまいます。ほぼ絶望的ですね。ちなみに年平均1%でも95歳までかかります。私にはリスクを回避する商品というよりはほぼ確実に損する商品にしか見えません。

 

 こんな保険に入るくらいなら、50歳から70歳まで積立でNISA20年間コツコツ積み立てて投資する方が、確率的にはるかに有利であることは明らかです。人生100年時代とか、公的年金不安という脅し文句に騙されてこんな割に合わない商品に加入することのないように注意をしたいものです。

 

 ※将来、商品開発競争が起って保険会社のコストが大幅に低下し、かつ金利が上昇して82歳くらいで損益分岐点を迎えるようになれば、検討してもよいと思います。(それでも私は絶対に加入しませんが)