カモをおびき寄せるエサ「老後資金は1億円必要」

 数年前、突然「老後資金として1億円が必要」なんて話が出てきました。それをきっかけにして「老後破産」「貧困老人」・・・などの言葉がはやり、情弱ビジネスの一角を占めるようになりました。

 1億円と聞いて不安になっている人の中に、数字の根拠を知っている人どれだけいるでしょうか。おそらくほとんどいないでしょう。

 

 出典は生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」の「ゆとりある老後生活費」に関するアンケート結果と言われています。調査結果によると、一か月当たり平均35.4万円でこれが65歳から90歳までの25年、約1億円なのだそうです。

 

 この数字に対していくつツッコミを入れられるかで、あなたの「カモとしてのおいしさ」がわかります。ツッコミを入れる前に動揺した人は、最高級のカモに高級野菜セットがついた特A(牛肉ならA5?)クラスのカモです。金融機関、不動産関係、税理士、コンサル、FPなどあらゆる情弱ビジネスのプロが骨の髄まですべて食べ尽くしてくれるでしょう。

 逆に、記事に対して5個も10個もツッコミを入れて「おまえらバカか」とライターに悪態をつける人は、食べるところがないばかりか出汁すら取れない最悪のカモと認定されるでしょう。自分の資産を守りじっくりと不安の少ない老後を目指すためには、食べるところのない、見向きもされないカモになる必要があります(カモとすら呼べませんね)。

 

 1億円説に対しては「公的年金を一切無視している」「平均値を使うことは誤り」「ゆとりある老後に必要な金額を下回ると老後不安というのは煽りすぎ」「80・90歳になればそんなに生活費は必要ない(使いきれない)」「一人一人のライフスタイルや価値観を一切無視している」「そもそも、老後を経験していない若いライターが数字だけみて書いている」等々、いろいろ問題点を指摘することができます。

 

 ところで、定年時に1億円以上の資産を持っている人なんて世の中に1割もいません(野村総研の調査によると1億円以上の資産を持つのは122万世帯です)。1億円ないと老後不安、貧困老人というのであれば、いまごろ65歳以上貧困者が街にあふれているはずです。実際はどうでしょうか?

 

 だからと言って何も手を打たないでいいわけではありません。年金は確実に減額されます。今より3割くらいは減ると仮定しましょう。とするとサラリーマンの場合、年金受取額は月20万円×12か月×25年×30%で1800万円程度の削減になります。

 (1億円-現在の資産)が不足額ではなく、今の年金世代の生活水準を維持するためには1800万円不足するということです。

 

 1800万円と聞くと絶望的に思えるかもしれませんが、30~40代の人であれば下手な運用をすることなく、賢く工夫すると生涯を通じて1800万円をひねり出すことはそんにに難しいことではありません。

 節約ネタは私の得意分野ではありませんが、車の費用と保険を必要最小限にし、"あれば便利"消費を止め、一日100円とか月300円程度の気づかない無駄をなくして、90歳までの50~60年間倹約を続けるだけで軽く1000~2000万円になることだけは自信を持って断言できます。

 

 1億円というキリのいいインパクトのある数字におびき寄せられることなく、冷静に自分にとって必要な金額を計算し行動計画を立て実行できる人は、高い確率で老後貧困から逃れることができると私は思います。

 

※もちろん、国が破綻したとか、ハイパーインフレが起きたとなれば、老後貧困になるでしょうが、そんな極端なことが起きたら現役世代も含めて全員が貧困になりますから、その場合はあきらめるしかありません。