「保険に入れば安心」教への警鐘

 中部以西の豪雨により犠牲になられた方のご冥福をお祈りいたします。被害に遭われたみなさまには心よりお見舞い申し上げます。

 

 今回の大規模災害から改めて保険(主に損害保険)について考えてみたいと思います。

 

 地震や大規模な自然災害が起こると、保険に対する世間の関心が高まります。それに乗じるように保険代理店がさまざまな特約を勧めてきます。「この保険に入っておけば安心です」「被災された方から保険に入っていて助かったというたくさんの声をいただいています」などというセールストークが代表的です。

 

 確かに保険に入っていて助かった人も多いでしょうし、枕を高くして寝られる人もいるでしょう。私も「保険」という仕組みは絶対に必要なものであり、適切に加入すれば非常に役立つものだと思っています。

 ただ「保険に入れば安心・大丈夫」という言葉を盲目的に信じている人に対しては、「本当にそれで大丈夫ですか」「先にすべきことはありませんか」と警鐘を鳴らしたいと思います。

 

 私が言いたいことは「保険は最後の手段でありその前に打つ手がある」ということと「金銭的な損害しか補償されない」ということです。保険というものは実際に発生した金銭的な損害を他人(保険会社)に転嫁することです。起きてしまったことに対する事後対応です。当然ですが長期間の避難生活によるQOLの著しい低下や生活再建のために必要な労力、心身の疲労などは補償されるわけではありません。

 

 だとするともっと大切なことは、そもそも損害を受けないこと、損害を受けた場合も影響を軽減することです。事前の対策をもっと重視すべきだと思います。

 

 自然災害を例に挙げます。震災時の揺れの強さや火災のリスク、水害、土砂崩れなどについては国や市町村からハザードマップが公表されています。家を建てたりマンションを購入する際にこれらを検討している人はどれだけいるでしょうか。

 先日、管理組合の総会で火災保険の更新が議題にあがっていたので、みなさんに質問したところ、事前にハザードマップを確認のは私だけでした。みなさん、駅からの距離や学区、間取りや価格はかなり調べるようですが一番肝心なことを気にされていなくて驚きました(自然災害は他人事なのでしょう)。

 

 今日の朝日新聞の記事によると

 川の増水や洪水による死者・行方不明者の66%は洪水浸水想定区域の「範囲外」で被災しているが、土砂災害はハザードマップで示されている危険箇所周辺での被災が多い。 

とのことです。

  なお、水害の場合66%は想定区域外と書かれていますが、ハザードマップが役に立たないという意味ではありません。浸水したエリアと想定区域はかなりの確率で重複しています。ただ、人的被害は、区域外で川や田畑の様子を見に出かけた人や車に乗ってして閉じ込められた人なども含まれているので、見た目以上に低くなっているだけです。

 

 

 加入する保険も販売会社から紹介されたものに入っている人が大半なので、保険の主契約と特約の種類、補償される内容や免責事項を正しく理解していません。こんな状態では、不必要なものには入っているが、肝心なものが足りていないという状態が起きても不思議ではありません。

 何が「適切な保険」なのかは、資産や負債、収入や支出、家族構成や会社の福利厚生制度などさまざまな要素が絡むので、ここで正解を書くことはできません。

 無知なまま専門家に相談しても、たいてい「保険に入れば安心教」に洗脳されるのがオチですから、自分で勉強するか、身内や信用できる友人などに同席してもらい代理店の話を聞くなどの自衛策を講じてください。

 

 繰り返しになりますが、事前にリスクが高いか低いかを確認せずに、保険に入れば安心と思うのは間違いです。大切なことは事前にリスクを回避・軽減することだということをお忘れなく。