AIによる資産運用が悲劇を生む予感-後半-

 前回は、今までの悲劇と似ているという話をしましたが、どうなるか、私の悲観的な予想を書いてみます。ただし予測ではありません。予想ですから私の個人的感想程度のものですので、あまり真剣に読まないでください。

 

 AIを使った運用っていうと何か目新しい運用方法のような気がしますが、膨大なデータを収集・解析し、独自のアルゴリズムを使って自動売買する仕組みにすぎません。今でもクオンツとかなんとか言われるものが、似たようなことをしています。

 AIを使えば自動学習してアルゴリズムを進化させていくことができるようになるという点が大きく異なるわけですが、果たしてそれが運用成績の向上につながるのでしょうか?私は懐疑的です。

 

 確かに他のAIに先駆けて「埋もれた有望株」や「売買の必勝法」を見つけ出すAIは存在するでしょう。必勝法を見つけたAIは短期的にはよい成績をあげるはずです。

 でも、多くのAIが市場の情報を分析し自らのアルゴリズムの進化させ続けるわけですから、そう遠くない将来この必勝法は解析され、ウラをかく新たな方法が登場するに違いありません。

 人間であれば必勝法を発見し解析し対策を練るためには多くの時間が必要ですが、AIであれば短期間にそれが可能になりますから、特定のAIが勝ち続けることはほとんど不可能だといえるでしょう。

 

 と、この程度で済むのであれば悲劇でも何でもありません。私が心配しているのは、もっと短期の話です。AIといえども長期的な必勝法を見つけることが困難だとすると、短期、しかも超短期取引に活路を見出そうとするのではないかと思います。

 超短期取引となると論理的に説明のつく理由や理屈など不要です。とにかく勝率の高さうなパターンや株価に影響を及ぼしそうな情報を見つけ出し短時間に売買して他人を出し抜くことに注力することになりますから、意味不明な乱高下が頻発するのではないかと思います(いわゆるフラッシュクラッシュと呼ばれるもの)。

 

 その結果、信用取引をしている投資家が追証を食らって強制退去させられたり、メンタルをコントロールできない投資家がパニックに陥り大損するくらいであればまだ笑い話の範疇でしょう。

 それよりも、突然の乱高下に他のAIが反応し損失を避けるために売りを出す、売りが売りを呼び市場がマヒ状態に陥るということの方が心配です。理由なきパニックの発生です。

 

 もしわずか数分で世界中の株式が10%下落したらどうなるでしょうか。その影響はおそらく株式市場だけでなく、世界中の債券市場や為替市場をも巻き込むことでしょう。その結果、あらゆる市場で流動性が瞬時に枯渇してしまうかもしれません。

 流動性が枯渇すれば、どんなに健全な金融機関であろうとトヨタ自動車のように巨額の利益を計上し信用がある企業であっても、瞬く間に経営危機に陥ることは歴史が証明しています。

 

 昔であれば市場を一時的に閉鎖して、政府や中央銀行が対策を講じることができました。でも、今や取引注文は1/1000秒以下の速さで成立してしまいますし、取引される金額も政府や中央銀行が手を打てる金額よりもニ桁も三桁も大きいのです。

 これを本当に無傷のまま事態を収束させることはできるのでしょうか。おそらく不可能でしょう。リーマンショックの時のように、いくつかの国が危機にさらされ、世界中で多くの企業が破綻し、世界中の人々の暮らしを脅かされるかもしれません。

 

 トランプの暴走や中国のバブル崩壊であれば、想定内なので対処方法も明確ですが、AIに起因する市場の暴走など想定外のことが起きた時に果たして国や企業、投資家が全員正しい行動を起こせるでしょうか。おそらく無理でしょう。

 そんなときに自分には何ができるか、どう振舞うべきか、自分なりの答えを考えておくことも大切だと思います。

 

 「本当の危機は誰も想定していないところで突然始まるもの」、歴史が教えてくれる冷徹な事実です。