個人M&Aはあらたな意識高い系向けビジネスの予感-前編-

 最近、ネットやビジネス誌、果てはテレビまで「サラリーマンやリタイア族が後継者不足の企業をM&Aにして活躍している」という、キラキラしたサクセスストーリーを話題にしています。

 

 先日も朝からNHKで紹介していて驚きました。後継者不足による零細企業の廃業は国レベルで考えるべき喫緊の課題ではあります。サラリーマンの経験を活かして廃業の危機にある零細企業を継承し発展させたら、それは感動のストーリーといえるでしょう。でも世の中そんなに甘いはずはありません。

 

 なんで急にそんな話が話題になったのだろうとググってみたら、 どうやら「サラリーマンは300蔓延で小さな会社を買いなさい」という本がきっかけのようです。著者によると10マン部を超えるベストセラーだそうです。

 

 私は、若い方がチャレンジすることを否定しませんし、成功したご本人が本を出版されることにも異議を唱えるつもりもありません。でも「サラリーマンの知識を零細企業に持ち込めば簡単に事業継承できる」みたいな甘い間違った考えを世の中にまき散らすことだけは、不幸な人を増やすだけですから絶対に止めていただきたいと思います。

 

 著者の経歴を拝見すると、SBI系ベンチャーキャピタルから県議会議員を経て、市長選に立候補するも落選し、起業した後、企業再生ファンドを立ち上げた方のようです。

 彼の著書の帯にはホリエモンの推薦文、FACEBOOKでは若手に囲まれた「ウェーイ」感あふれる写真や「○○さんは今日会社を買いました」なんてサクセスストーリーがあふれ、さらには意識高いが大好きなNOTEやオンラインサロンにも熱心なご様子。個人的な印象ですが、とってもアレな感じがします。

 

 とはいえ、第一印象だけで決めつけることはよくないので、本屋に出向き30分ほど立ち読みしてきました。

 人生100年時代から年金不安を煽り、だからXXしましょう的な構成は、サラリーマン大家や仮想通貨投資を煽っていた三流本と瓜二つで、まあこの本を真に受けて行動すれば99%は失敗するよなぁというのが正直な感想です。残念ながら買う価値はなさそうです。

 

 

 考えてみてください。あなたが社長の後任候補として常務として入社したとしましょう。どこの馬の骨かもわからないあなたに従業員がついてきてくれるでしょうか。取引先は今までどおり注文してくれるでしょうか。銀行は今まで同じ条件で融資を続けてくれるでしょうか。

 従業員や取引先、金融機関の担当者になったつもりで考えてください。普通に考えれば、お手並み拝見となりますよね。そんな完全アウェイの中で経営者の経験のないあなたが半年、1年の間に卓越した実績を残し、信用を築かなければならないのです。

 未知の業界の未知の会社で、いきなり営業、生産、マーケティング、人事、経理に至るまでを一人でマネジメントし成果を出すことは果たして可能なのでしょうか。ハードルの高さを想像していただけるでしょうか。

 

 もちろん、不可能ではありません。何百人に一人は成功するでしょう。でも事業承継って想像以上に難しいんですよ。大塚家具を考えればわかるでしょう。キラキラの経歴を持ち社内にも事業にも精通していたエリート娘ですら、経営やわずか3年で優良企業を存亡の危機にまで追い込んでしまうのです。

 悪いことは言いませんから、この本を読んだくらいでうぬぼれてM&Aしようなんてことだけは考えないでください。意識高い系の手におえるようなものでは決してありません。

 

 株や不動産で失敗しても身ぐるみはがされ自分と家族が路頭に迷う程度の話ですが、会社を買って失敗したら従業員やその家族、取引先まで巻き込んでしまうんですよ。路頭に迷った上に多くの人から恨みを買う人生なんて想像できますか?

 

続く・・・はず(続かないかも)