個人M&Aはあらたな意識高い系向けビジネスの予感-後編-

 昨日おとといあたりから、ブログやツイッターでも個人のM&Aの話が話題になり始めました。みなさん、おおむね「そんなに甘い話はない」とおっしゃってました。

 

 私は、元オーナー企業に籍を置いたことがありますから断言します。オーナー会社の従業員が、親族でもない外部から招へいされた人間に無条件についていくなんてあり得ません。ほとんどの人はものすごく警戒しますし、残りの人もお手並み拝見と様子見を決め込みます。それに加えて取引先も金融機関も、いろいろ揺さぶりをかけて値踏みしてきます。

 オール野党の中、たったひとりでみんなが認めるような実績を上げないといけないのです。それだけのスキルと経験がありますか?

 

 

 実際にあった例ですが、親会社から来た定年まじか(58歳)の落下傘社長に対して、経理から「月末の3000万円の決済資金が足りません。どうしましょう」といわれた人もいます。また、着任早々組合からストをちらつかせ労使交渉を求められた人もいます。社内の人間だってそうやってあなたの能力や覚悟を試すんですよ。あなたはそんな試練の数々を逃げずに対処できますか?

 社員の前に立って夢のある将来を熱く語ったくらいですぐに感動してくれるような社員はド、ラマや小説の中にはいるかもしれませんが、現実の世界には一人もいません。

 

 

 そもそも高属性サラリーマン向け(実態は、意識高い向け)の投資話にまともなものはほとんどありません。

 だっておいしいところはとっくの昔に関係者や金融機関といった上流が食いつき、ファンドなどの中流が骨までしゃぶり、彼らが手を出さなかったゴミ案件だけが下流(意識高い向け)までたどり着くという構図は、アパマン投資やクラウドファンディングと同じです。そんなマイナスからのスタートだということを理解していますか?

 

 だから見ず知らずの会社に一人で乗り込み企業を再生させるといったドラマのような展開を夢見るようなバカなまねは止めた方が賢明です。

 

 

 話は変わりますが、昨日紹介した本には、ほんの少しだけリスク回避について書かれていました。借り入れの経営者保証と瑕疵の話です。

 零細企業であれば社長が会社の保証を行うものですが、これを銀行と交渉して外してもらえばいいとか、M&Aしたあとに当初想定していなかった問題が発覚したときのために2年間はノーペナで契約を解除できる条項をつければ大丈夫なんて、書いてありました。こんなノー天気な話はあり得ません。

 

 常識的に考えれば一発でわかるはずですが、そんな都合のいい話を金融機関や創業者が飲むはずがありません。誰もが知っている有名な経営者ならともかく、あなたは第三者から見ればどこの馬の骨かわからない人間です。そんな人に対して無条件にそんな有利な条件を提示するなんてあり得ません。

 まるで、かぼちゃの馬車の投資家に対して「30年間家賃保証するから大丈夫です」と言っていたのと同じです。

 

 これらを考えると、クズ企業を意識高いサラリーマンに売りつけて手数料などで稼ごうとしている連中が仕掛けたワナくらいに考えたほうが良いのではないでしょうか。

 

 それでもどうしてもやってみたいという人は、親類や親友が経営している会社の経営陣の末席に名を連ね経営の一端を担う程度にしておいた方がいいですよ。

 

 こんな甘い話に少しでも興味を持ってしまった方には、ここ3年間の大塚家具の大混乱を研究することをお勧めします。身内ですら事業承継が難しいということが手に取るようにわかるはずです。