「外国株投資は配当控除が使えないから不利」というウソ

 以前、高配当系投資の有名なブロガーが「外国株投資は配当控除が使えず損だ」とか「配当金生活には不利だ」と書いているのを見かけました。彼らは投資ブログの上位ランキングに入っていますし、Twitterでも何万人かのフォロワーがいらっしゃいます。投資家の集まりでもよく話題になりますので、個人投資家に対する影響力はかなりのものなのでしょう。そういう方が、中途半端な知識を振りかざして間違った知識をばらまいているのを見ると苦々しく思ってしまいます。

 

 かれらは「日本株の配当金にかかる税金は20.315%、外国株の配当金も日本国内の課税は20.315%だが、米国株の場合は現地で徴収される税金が10%あるので合計の税負担は30%近くなる」「日本株は確定申告すれば配当控除を受けられるが、外国株には適用されないので不利になる」ので日本株が有利だと主張します。

 

 確かに表面的には正しく見えるのですが、この考え方は残念ながら間違いです。

 配当金は税引き前利益から法人税等を控除した税引き後利益が原資となります。この原資のうち役員賞与や内部留保される分を除いたものが配当として分配されます。そしてこの配当から所得税等を控除したものが投資家の受取配当金(口座に振り込まれる金額)となります。

 

 外国株と日本株を配当を比較するのであれば、最後の所得税等の部分だけを比較して損得を論じることはナンセンスです。少なくとも法人税等についても考慮しなければ意味がありません。

 

 簡単な例で考えましょう。税引き前利益が100の国内株Aと外国株Bがあるとしましょう。この100のうちいくらが個人投資家に支払われるか試算してみると、

(国内株A)

 100×0.7(法人税等の実効税率30%)×0.8所得税率(20%)=56

(外国株B)

 100×0.8(法人税等の実効税率20%)×0.9(外国株源泉税率10%)×0.8所得税率(20%)=57.6

となります。諸外国の法人税等の実効税率が15~25%なのに対して、日本の実効税率が30%と高いため、税引き前利益に対する受取配当金の額にあまり差はありません。

 

 次に税額控除を加味しましょう。国内株には配当控除が、外国株には外国税額控除が適用されます。両控除にはそれぞれ条件があるので控除される額は100のうちの0~10%分となります。細かな試算は複雑になりすぎるので省略しますが、結論としてはケースバイケースで有利になったり不利になったりします。どちらが有利とは断定できません。

 (なお配当控除には住民税分もありますが、住民税でも配当控除を受けようとすると総合課税となり税率が5%から10%に倍増しますので、逆に損することが多いはずです。したがってここでは住民税は配当控除を受けない方法を選択します)

 

 先ほどの例では税引き後利益が全額配当に回る前提でした。しかし、一般的に欧米企業と比較すると日本企業は株主還元に消極的です。税引き後利益から支払われる配当金の比率を配当性向と言いますが、欧米の主要企業の平均が50%超に対して日本の主要企業は30%強しかありません。

 そこで配当性向まで加味して再計算すると

(国内株A)

 100×0.7(法人税等の実効税率30%)×0.3(配当性向)×0.8所得税率(20%)=16.8

(外国株B)

 100×0.8(法人税等の実効税率20%)×0.5(配当性向)×0.9(外国株源泉税率10%)×0.8所得税率(20%)=28.8

となります。

 

 この試算からは外国株式の方が圧倒的に有利ということがわかります。外国株投資は配当控除が使えないから不利という考え方はウソです。

 

 そもそも、株式投資を行う上で外国株を購入する目的は、リスクを減らしリターンを向上させるためです。配当控除が使えないという理由で外国株投資を行わないことは、目先の小さな税金の損得に目を奪われて、はるかに大きな果実を捨ててしまうことになりかねません。

 

 誤った情報や目先の税の損得に惑わされて損するのは投資家自身です。私も含むブログの情報などは話半分に考え、自分でしっかりと調べましょう。そして、目先の損得ではなくそもそも投資している目的を忘れずに、投資を続けていただければと思います。

 

※試算に使用している値はいずれも概算です